ダイヤモンドを『割れ』や『欠け』から守るためにおさえておきたい基礎知識
ダイヤモンドは、「硬くて強い鉱石」というイメージが強く、ジュエリーとして身に着けているときに「割れや欠けなどのトラブルに見舞われることなどない」と考えている人は多いことでしょう。確かにダイヤモンドが固い宝石というのは間違いなく、「傷に対して非常に強い」という特徴を持っているのですが、別に全ての衝撃に対して強いということではないのです。
ダイヤモンドに関しては、婚約指輪に利用される宝石の代表というこのもあり、『永遠の愛』などを強調するため、とにかく硬く永遠に美しさが保たれるなどといった宣伝文句が使われることがあるのですが、実際にダイヤモンドを購入するときには「靭性(じんせい)」というキーワードを覚えておきましょう。
キーワードは『靭性(じんせい)』
宝石の強さを比較するための数値にはいろいろな物があるのですが、ダイヤモンドの特徴を説明される場合には『モース硬度』が良く注目されます。このモース硬度とは、「いかに傷がつきにくい鉱石であるか」を表す数値であり、ダイヤモンドはこのモース硬度が全鉱石の中で最も高い「10」なのです。そのため、ダイヤモンドは宝石の中でも特に硬い宝石で強いというイメージが広がっているのです。
しかし、宝石の強さを比較するときには、このモース硬度だけに注目するのは少し危険です。というのも、この数値はあくまでも「傷のつきにくさ」をあらわしているものであり、全ての衝撃に対する強さをあらわすものではないのです。
鉱石の性質を比較する場合には、モース硬度に合わせて『靭性』に注意しましょう。この靭性とは、「いかに割れにくい鉱石か?」をあらわしている数値で、これが高いほど割れにくい宝石となるのです。
そしてモース硬度が鉱石の中で最も高いダイヤモンドは、靭性に関しては「7.5」と石英や水晶などと同程度の強さしかないのです。したがって、ダイヤモンドだから「永遠に割れることもなく美しいまま」などということはなく、ハンマーなどでたたけば簡単に粉々になってしまいます。
ダイヤモンドの『靭性(じんせい)』が低い理由
それではモース硬度が鉱石の中で最も高いダイヤモンドが、靭性に関してはそこまで高くないのはなぜなのでしょうか?
これはダイヤモンドを構成する元素が深くかかわっていると言われています。ダイヤモンドは、『炭素』という元素でほとんどが構成されており、単一元素が、規則正しく並んでいるのがダイヤモンドの特徴となります。しかしこれらの元素は、全てが均一に結びついているわけではなく、ある方向からの力には非常に強い力を発揮するものの、別の一方向からの力には元素の結びつきが弱く力を発揮できないという特徴があるのです。
そして、この結びつきが弱い方向から衝撃が入った場合、簡単に割れてしまうことになるのです。
まとめ
今回は、非常に硬くて割れるようなことは絶対にないと考えられがちなダイヤモンドについてご紹介しました。本稿でご紹介したように、モース硬度が10と鉱石の中で最も硬いと言われているダイヤモンドですが、実はこの数値は「傷のつきにくさ」をあらわしているもので、割れや欠けに関する強さではないのです。特に注意したいのは、非常に強いと考えられているダイヤモンドですが、この割れや欠けに関する靭性はたいして高くなく、水晶などと同程度の数値しかなく、割れには決して強くない宝石なのです。
したがって、ダイヤモンドを身に着けるときには、ふとした瞬間にぶつけてしまう…といったことがないようにしましょう。知らないうちに大切なダイヤモンドが割れてしまいダメになってしまう…なんて可能性もあります。